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2008年7月23日

2008年7月23日 (水)

アメリカン・パイ〜萩尾望都

American_pie

ホラーやSFが萩尾望都の真骨頂だと思っていた。
彼女の恋愛コメディなどに興味はなかった。

しかし短編集などを買えばいろんな漫画が付いてくる。
「アメリカン・パイ」もその1つだった。
ついでに読んだつもりが・・・・感嘆した。
それからと言うもの萩尾望都のありとあらゆるものを
読みあさったのである。
男性漫画家にこの発想は出てこないだろう。
女流漫画家だからこそ・・・の漫画である。
と言うかこれは萩尾望都にしか描けない。
「アメリカン・パイ」は少しまえに宝塚歌劇団で舞台劇になった。


アメリカン・パイと言えば、70年代のドン・マクリーンの
ヒット曲。

♪So bye-bye, Miss American Pie
Drove my chevy to the levee
But the levee was dry
And then good old boys were drinkin' whiskey and rye
Singin' this'll be the day that I die
This'll be the day that I die ♪

さようなら, ミス・アメリカン・パイ
シボレーを走らせて防波堤に行った
けれどボクは落ちこんじまった
気のあった仲間たちとウィスキーやライ麦酒で酔っぱらっちまえ
きょうはボクが死ぬ日だと歌いながら
死ぬ日だと

飛行機事故で死んだロックンローラー、バディ・ホリーに捧げた歌。
当時の新聞に「音楽が死んだ日」と載った。
その日を歌ったものであろう。
意味不明な歌詞が多い。
this'll be the day that I die
の部分はいろいろと解釈があり、
(バディ・ホリーの曲に「that'll be the day (When I Die)」がある。
それをもじったものであろう)
ボクが死ぬ日・・・と訳す人
ボクが死ぬなんてことはない・・・と訳す人
萩尾望都は
もうなにもかもおしまいさ・・・と解釈したようだ。
全体の詩を見ると、わたしもそれが合っている気がする。


ストーリーは、
さえないシンガーソングライターのグランパと彼のアパートに転がり込んだ
不治の病の少女リューの物語。
リューはいつも鼻歌のようにアメリカン・パイを歌っている。
これは絶望の歌。

グランパはひょんなことから彼女が先のない日々を想い、
フランスからこのアメリカのフロリダに家出してきたことを知る。
或る日、気まぐれでリューにステージで歌わせる。
何気なく歌い出したその歌声は観客の息を飲み、魅了するが、
体調を崩し、その場に倒れてしまう。
それでも彼女は次の日から少しづつ歌いはじめる。


グランパの歌

♪古い古い歌が
誰が歌ったのかわからないくらい古い歌が
それをつくった人のことも歌った人のこともすべて忘れさられ
消えさっても
その歌は残ってるように
幾世代すぎても想いはともに時をこえ歌いつがれて
そこに残っているように
そんなふうに生命の消えぬ限り時の消えぬ限り
いや もしなにもかもが失われ消えても
果てぬ闇の底に想いだけは残るのだ
時の流れに星ぼしの輝きの下に
また幾千の命の中をどこまでもどこまでも
かけてゆくのだおまえの想いは…♪


そして彼女は逝ってしまう。

とてつもなくやさしい物語です。
グランパのような友人がほしくなります。
数十年前の漫画ですが、せつない美しさは今も古さを感じない。
グランパの歌のように。

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