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2008年9月28日

2008年9月28日 (日)

おいら江戸ッ子よ!

Asakusa


親父はすでに25年くらい前に死んでしまった。
死因は腎臓ガンと言われているが、解剖は避けたので
はっきりと死因はわからないでいる。

具合が悪くなって入院を強制され、御茶の水の順天堂病院を
紹介されたが、親父はがんとして聞き入れなかった。

「御茶の水なんてえところじゃ競馬ができねえ」

本人は寝込んでんだから競馬なんかできるわけもないのに。

「浅草だ!」

と言うことで設備もあまりよろしくない浅草の病院になった。

浅草には新族会社があり、若い社員を病院に呼びつけては
場外馬券場に券を買わしに行っていた。
そう、浅草には場外馬券場があるのだ。

無類のギャンブル好きであったのだ。

酒も女もやらないかわりにギャンブルは異常だった。
競馬、競輪、競艇、ちんちろりん、麻雀、将棋、若い頃はハスラーで賭けビリヤード。
わたしゃ幼少の頃、賭場に夕飯の知らせに行ったこともある。

そんななので、逸話は山ほどあるがここでは出来ない。

その頃、デザイン会社に勤めていて、午後に会社に家から電話があった。

「父ちゃん、死んじゃったよ」

急いで病院に行き、死因を聞いてたまげた。

「今日も馬券を会社の若い衆に買わしに行ってさ、
大穴当てたんだよ。そんでもって、点滴はずして廊下に
すっ飛んで行って、ばんざーーーい、ばんざーーーい、ってやって、
コテっと倒れたんだよ。その後、先生に怒られてさ、
すんません、もうしません。なんて言ってさ、急に容態が悪くなってね。
あっと言う間さね」

さて葬式は社葬となったが、通夜の夜中、役員たちが棺桶の前で賭け麻雀を
始めたのである。

「これが一番喜ぶぜ」

葬式で参列者たちに死因を聞かれ、話すとみんなが笑った。

「あの人らしいですなあ」

その後、「借金はなかったのか?」と通帳を調べたのである。ギャンブル大好きな
親父である。大借金があるにちがいない。
結果、一銭もなかった・・・が金もなかった。
財産などあるわけもなく、なにもない。
と言うか給料は、たらふく貰っていたのだが、大金を勝手におろしたりしている。
まとまった金が入ると会社の人や親戚にくれてやったり、おごったりしていた
らしいことが通帳から、役員たちの話であきらかになった。


生前、「おれももっとずるく生きれりゃなあ、マンションの一戸も
持てたんだがなあ」と言っていたが、大嘘だとばかり思っていた。
ありゃ、ほんとだったんだ。


若い頃は浅草六区や上野のアメ横でふらふらしていたそうだ。
或る日、かっぱらいをしていた小僧をひッ捕まえて、会社に連れて行き、
丁稚みたいなことをさせたと言う。
戦後、親を空襲などで亡くした小僧たちに職を与えていたのであるが、
「おう、まかしたぜぃ!」と置いていって本人はまた、ふらふらとどこかに
行っちまったそうだ。寅さんみたいだ。
しかし、その子供はそれから何十年もそこで働いた。
「おまえの親父さんには恩があるんだ」
と言っていた、さる会社の部長さんがその人だった。

宵越しの銭はもたねえ

昔ながらの江戸っ子気質、浅草気質


その後、その大穴の懸賞金をもらった。
それが親父の財産分与であった。
最後まで「らしい・・・」親父だった。

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